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生活保護費の引下げ対応に強く抗議し、生活保護制度の抜本的改善を求める意見書

2026.03.19

生活保護費の引下げ対応に強く抗議し、生活保護制度の抜本的改善を求める意見書

全国青年司法書士協議会
会 長 岩田 豪

 当協議会は、全国約2,200人の青年司法書士で組織され、「市民の権利擁護及び法制度の発展に努め、もって社会正義の実現に寄与すること」を目的とする団体である。
 当協議会は、毎年、電話による「全国一斉生活保護相談会」を開催し、また毎週1回「生活保護相談ダイヤル」を設置しているが、生活に苦しむ声が多数寄せられている。
 これらを踏まえ、次のとおり意見を申し述べる。

1.最高裁判決への対応策の問題点

 当協議会は、厚生労働省(以下「貴省」という。)が示した令和7年11月21日付「社会保障審議会生活保護基準部会最高裁判決への対応に関する専門委員会報告書等を踏まえた対応の方向性について(https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_66228.html)」(以下「本件対応策」という。)を、違法な減額処分によって生じた損害の回復(原状回復)を全国の生活保護利用者に対して等しく実現するものではなく、令和7年6月27日最高裁判決(以下「最高裁判決」という。)の趣旨に反する「実質的不履行」であると断じざるを得ない。
 最高裁判決は、平成25年から平成27年にかけて行われた生活保護基準引下げを理由とする保護費減額処分を違法として取消しを認める統一判断を示した。これを受け、当協議会は令和7年8月5日付「生活保護基準引下げの違法性を認定し保護費減額の処分を取り消す判決を評価し、全ての生活保護利用者に対し適切な補償をすること、および生活保護制度に関する社会の偏見・差別をなくすことを求める会長声明」(以下「会長声明」という。)を発出している。
 しかし、貴省の本件対応策は、「追加給付を『高さ調整▲2.49%の水準』で一律に実施(当時の▲4.78%との差額分のみを給付)し、原告のみに特別給付金を上乗せする。」というものである。
 違法な引下げによって権利を侵害された全ての生活保護利用者に対して行うべき補償は、引下げ前基準との差額を全額補填することである。本件対応策は、貴省が最高裁判決の趣旨を軽視し、財政的都合を優先して「損害の切下げ」を行ったものと言わざるを得ない。また、原告のみに特別給付金を上乗せし、補償額に差を設けることは、救済の統一性・平等性を欠く。本件対応策は、憲法上の生存権侵害に対する補償として、生活保護法の「無差別平等の原理」にも反するものであり、生活保護利用者の分断を引き起こす要因となる相互不信の種をまく卑劣な行為であると強く抗議する。

2.生活保護相談会で寄せられた切実な声と制度の現状

 当協議会が毎年開催している「全国一斉生活保護相談会」では、生活保護を利用している方々からの深刻な相談が多数寄せられている。昨今は物価高騰の影響もあり、保護費だけでは生活を維持できないという切実な窮状が明らかになっている。令和8年1月25日に開催した相談会では、以下のような声が寄せられた。
・「保護費が少なく、物価が高騰しているので生活が苦しい。」
・「生活保護の金額が少ないのでもっと上げてほしい。グループホームで暮らしているが、朝食は自分で買わねばならず、いつもカップラーメン。」
・「生活が苦しい。食事を2食に減らしているが限界。冷蔵庫、洗濯機は10年以上前から壊れている。」
・「物価高で今までと同じ生活をすると感覚では2倍くらいお金がかかってしまう。そのため、切り詰めて生活しているが、特に次の保護費支給までの最後の1週間が苦しい。」
・「物価が上がり生活が苦しい。暖房もつけられない。」
・「保護費を使い切ってしまって苦しい。お米をはじめ物価の上昇で生活が厳しくなっている。土地柄、寒さがきついので、暖房のやりくりもうまくいかず、凍死の危険を感じることもある。」
 また、今回の最高裁判決後の国の対応について不当性を指摘する意見も寄せられた。
 こうした実態を鑑みると、現行の生活保護制度は、憲法で定める「健康で文化的な最低限度の生活」を保障する制度とは到底いえず、自立を助けるどころか、生活保護利用者の生活そのものが成り立っていない状況にある。

3.基準額の引上げと生活保護制度への偏見・誤解の是正措置の要求

 生活保護制度は、憲法に基づく生存権の保障を具体化する制度である。最高裁の違法判断が示された後においても、国が基準引下げの正当性を強調し続けることは、生活保護利用者の尊厳を損ない、制度に対する不信を拡大させるものである。司法判断を踏まえ、生存権保障を最優先する姿勢を明確に示すことこそが、今、国に強く求められている。
 さらに、相談会で寄せられた声にもあったとおり、昨今の物価高騰の社会情勢の変化を鑑みれば、現行の基準額では憲法第25条で定められる「健康で文化的な最低限度の生活」を保障する機能を果たせていない。よって、基準額そのものの抜本的な引上げを視野に入れた検討が必須である。
 加えて、生活保護利用者に対するバッシングや差別的な風潮が社会に見られる現状を鑑みれば、国が率先して社会的弱者に対する公正な姿勢を示す必要がある。また、生活保護制度を取り巻く偏見や誤解は深刻であるにもかかわらず、政府は何ら是正策を示していない。それどころか、令和8年1月23日に、外国人政策の方向性を記した「外国人の受入れ・秩序ある共生のための総合的対応策」(https://www.cas.go.jp/jp/seisakukaigi/gaikokujinzai/index.html)を新たに取りまとめ、外国人の生活保護利用の「対象となる者の見直し」を検討する方針を示している。貴省が偏見・差別の改善策を出さない中で、生活保護に対する偏見・誤解は深まるばかりであり、当協議会はこの状況を深く憂慮し、強く抗議するものである。

4.結論

 以上の理由から、当協議会は貴省に対し、下記の事項を速やかに実施し、生活保護制度が真に生存権を保障する制度として機能するよう、責任ある対応を行うことを強く求める。
(1)本件対応策の撤回
(2)すべての生活保護利用者に対する完全な補償
(3)社会情勢と生活保護制度の実情を踏まえた基準額の抜本的な引上げ
(4)生活保護制度への偏見・誤解の是正措置の実施

________________________________________

(参考)
厚生労働省HP「平成25年生活扶助基準改定に関する最高裁判決への対応について」
 https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_68902.html

平成25年生活扶助基準改定に関する最高裁判決を踏まえた保護費の追加給付等について(令和8年2月20日付社援発0220第1号厚生労働省社会・援護局長通知)
 https://www.mhlw.go.jp/content/12000000/001660519.pdf

○全青司意見書・会長声明等
2025年8月5日付け生活保護基準引下げの違法性を認定し保護費減額の処分を取り消す判決を評価し、全ての生活保護利用者に対し適切な補償をすること、および生活保護制度に関する社会の偏見・差別をなくすことを求める会長声明
 https://www.zenseishi.com/wp-content/uploads/2025/08/生活保護基準引下げ取消判決を評価し、適切な補償及び生活保護制度への偏見解消を求める会長声明.pdf

2024年10月1日付け猛暑において生活保護利用者の命を守る措置を講じる等生活保護制度の改善を求める意見書
 https://www.zenseishi.com/wp-content/uploads/2024/10/猛暑において生活保護利用者の命を守る措置を講じる等生活保護制度の改善を求める意見書.pdf

2021年8月31日付け生活保護制度利用者の自動車保有についての意見書
  https://www.zenseishi.com/wp-content/uploads/2023/03/生活保護利用者の自動車保有に関する意見書.pdf

2019年4月19日付け生活保護基準引下げの撤回を求める会長声明
 https://www.zenseishi.com/opinion/2019-04-19-01/生活保護基準引下げの撤回を求める会長声明.pdf

2017年12月15日付け生活保護基準引下げの動きに強く抗議する会長声明
https://www.zenseishi.com/opinion/2017-12-15-03/生保基準引き下げの動きに強く抗議する会長声明.pdf