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修正案での「LGBT理解増進法」成立に抗議しすみやかな法改正を求める会長声明を発出いたしました。

2023.07.12

修正案での「LGBT理解増進法」成立に抗議しすみやかな法改正を求める会長声明

2023年 7月 12日
全国青年司法書士協議会
会長 荘原 直輝

 本年6月16日、参議院にて「性的指向及びジェンダーアイデンティティの多様性に関する国民の理解の増進に関する法律」、通称「LGBT理解増進法」(以下「理解増進法」という)が、野党2会派が提出した法案を含めた修正案にて可決、成立し、同月23日より公布施行された。

 我が国ではまだまだセクシュアル・マイノリティについての理解が進んでおらず、それ故に当事者の方々は差別や偏見にさらされ、苦しい立場に置かれている。心理的ストレスから自殺未遂、希死念慮、精神疾患、不登校の経験等の数も、そうではない人に比べて非常に高いといわれている。特にトランスジェンダーの中には、就職してもアウティングに遭って職場を去るということを繰り返す方もおられ、非正規雇用の割合がシスジェンダーよりも高いという調査結果もある。

 「LGBT理解増進法」は制定の過程で、特に自民党保守派議員からの反発により、2021年に超党派議連で合意したはずの法案が覆され、「差別は許されない」との文言を「不当な差別はあってはならない」と修正されるなど、国会への法案提出までにも問題が多い法案ではあった。しかし、大幅に後退した法案であっても、これまで主要先進国と比べて同種の法がなかった我が国にとっては、差別解消へ一歩前進ともいえ、期待をこめた当事者の方も少なくなかったのではないかと思われる。

 ところが、可決された法案はさらに修正のされたものであり、特に第12条として「この法律に定める措置の実施等に当たっては、(中略)全ての国民が安心して生活することができることとなるよう、留意するものとする」という文言が追加されたことに、多くの当事者・支援団体から批判の声が上がった。
 法律はその制定の際には、基本的人権が侵害されがちな少数派や社会的弱者への配慮が必要となる。「理解増進法」の場合、「安心して生活でき」ていないのは、セクシュアル・マイノリティであり、その方たちが「安心して生活」するための法律であったはずである。にも関わらず、修正案は「多数派への配慮」という正反対の意味合いが加わっているのである。これではまるで「セクシュアル・マイノリティがいると国民が安心して生活できない」というように読み取れ、これまでと同じく、むしろこれまで以上にセクシュアル・マイノリティの人権を制限しかねない。さらには、地方自治体における差別禁止条例やパートナーシップ制度の創設の動きも萎縮しかねず、困難や生きづらさを抱えてきたセクシュアル・マイノリティの権利擁護活動に対する不当な圧力にもなりかねない。これでは、「差別増進法」と批判されるのも頷ける。

 このような修正案が提出された背景には、「理解増進法が成立すると、女性だと自称すれば、生物学上の男性が女性用トイレ・風呂に入ってきても拒否できなくなる」というようなデマを政治家等が広め、世間を混乱させたことが大きな要因と考えられる。
 「理解増進法」はあくまで理念法であるため罰則や規制もなく、国等に課せられた義務もほとんどが努力義務となっており、その条文を読めばそれが誤った情報であることは明白である。また、当然ながら「理解増進法」の制定が、刑法や公衆浴場法等に影響を与えるものでもない。
 しかし、可決後に至っても同趣旨の発言をする議員がおり、「女性の生存権を守る」と称した議連まで設立されている。まるで「トランスジェンダーはシス女性にとって脅威である」と言わんばかりである。
 ある属性の方を、属性を理由に危険視し排除することは、歴史的経緯を見てもヘイトクライムに繋がりかねない非常に危険な行為であり、実際にトランス女性であることを公表する弁護士に殺害予告が届くようなことも起きている。ましてやそれを国会議員が行うなど断固として許せないことであり、そのような議員には認識を改めるよう強く求めるものである。

 その他の点では、第6条及び10条のうち、学校が行う教育・普及等に関し、「家庭及び地域住民その他の関係者の協力を得つつ」という文言が追加された一方で、国及び地方公共団体が取るべき施策から「民間の団体等の自発的な活動の促進」が削除された。
 セクシュアル・マイノリティへの差別解消には、幼少期からの教育が極めて重要であり、学校でいじめ被害を経験するセクシュアル・マイノリティが非常に多いことも鑑みると、学校での取り組みは必須と考えられるが、この文言が追加されたことにより、家庭や地域住民からの反対の声があった場合に、学校での教育普及活動等を行うことができないおそれがある。  
 また、セクシュアル・マイノリティの支援については、長年公的な支援がない中、民間の当事者・支援団体が自発的に取り組んできた経緯がある。1998年に国連総会で採択された「人権擁護者に関する宣言」は、セクシュアル・マイノリティなどの人権擁護を目的とする個人と団体の活動を促進、保護することを国に義務付けており、我が国も宣言に賛同しているが、この宣言とも反しており、公的な取り組みから民間団体が排除されたことについて大きな疑問を抱かざるを得ない。
 当協議会もプライドパレードへの参加や相談会の開催、会員への啓発活動等の取り組みを行ってきたが、それらを通して民間団体の自発的な支援活動の意味合いは大きく、国や自治体が民間団体の活動を後押ししていく必要性があると考える。

 上記の理由から、当協議会は修正案での「理解増進法」成立に抗議するとともに、真にセクシュアル・マイノリティへの差別解消につながる内容となるよう、すみやかな法改正を行うよう求めるものである。
 当協議会は、今後も性の多様性を認めあえる社会の実現を目指して、活動していく。