'20-10-14 政府による⽇本学術会議会員の任命拒否の撤回および会員候補者全員の速やかな任命を求める会⻑声明を発出いたしました

政府による⽇本学術会議会員の任命拒否の撤回および会員候補者全員の速やかな任命を 求める会⻑声明



2020年10月14日

全国青年司法書士協議会
会長 川上真吾


 菅義偉内閣総理大臣が、日本学術会議が推薦した同会議の会員候補者105名のうち6名の任命を拒否し、残りの99名のみを任命したことにつき、当協議会は以下の通り声明を発する。

 日本学術会議は、「科学が文化国家の基礎であるという確信に立つて、科学者の総意の下に、 わが国の平和的復興、人類社会の福祉に貢献し、世界の学界と提携して学術の進歩に寄与すること」を使命(日本学術会議法前文)とし、昭和24年(1949年)1月、内閣総理大臣の所轄の下、政府から独立して職務を行う「特別の機関」として設立された組織である。

 日本学術会議法7条2項は、「会員は、第十七条の規定による推薦に基づいて、内閣総理大臣が任命する。」と定め、同法17条は、「日本学術会議は、規則で定めるところにより、優れた研究又は業績がある科学者のうちから会員の候補者を選考し、内閣府令で定めるところにより、内閣総理大臣に推薦するものとする。」と定めている。
 この条項は、1983年にこれまでの選挙制に代わり、推薦制度を導入した際に改正されたものである。その際の国会審議で政府は、「実質的に総理大臣の任命で会員の任命を左右するということは考えておりません」、「従来の場合には選挙によっていたために任命というのが必要がなかったのですが、こういう形の場合には形式的にはやむを得ません」と、内閣総理大臣の任命は形式的なものであると明確に答弁している。
 当時の中曽根康弘内閣総理大臣も、「実態は各学会が推薦権を握っているようなもので、政府の行為は形式的行為であると考えれば、学問の自由独立というものはあくまで保障される」という答弁をしている。
 つまり、日本学術会議法7条2項は、「選挙を経ずに公務員に就任するので、付随的な行為として形式的な任命を行わざるを得ない」という趣旨に基づくものである。国家機関が日本学術会議会員の人事を通じて、学問研究の自由に介入することが許されないことは、憲法23条、そして日本学術会議法の立法事実、法文の趣旨からも明らかである。

 しかしながら、10月1日、菅義偉内閣総理大臣は、日本学術会議が推薦した同会議の会員候補者105名のうち6名の任命を何ら合理的な理由を示さずに拒絶し、残りの99名のみを任命した。これは日本学術会議法第7条第2項及び過去の確定した政府答弁に違反する明らかに恣意的な人事介入である。そして、学問研究、研究発表への政府の干渉を禁止し、教育機関において学問に従事する研究者に職務上の独立を認め、その身分を保障するという学問の自由を定めた憲法23条に違反するとともに、学問の自由を実質的に裏付ける憲法第19条(思想良心の自由)及び第21条(表現の自由)に違反する重大な問題である。
 時の政府の政策に適合しないからといって、学問研究への政府の干渉は絶対に許されてはならない。自由な立場での研究が保障されることにより、国民は、言論活動によって政治的意思決定に関与することができ、民主政に資する社会的な価値を形成することが可能となるからである。戦前、国家権力にとって都合の悪い研究者や学問研究が国家権力により圧迫・侵害されてきた歴史を繰り返してはならない。

 よって、当協議会は、日本学術会議が推薦した同会議の会員候補者105名のうち内閣総理大臣が行った6名の任命拒否の撤回と、当初推薦された会員候補者全員の速やかな任命を求める。


日本学術会議推薦会員の任命拒否撤回と任命を求める会長声明 はこちらから。