'14-03-01 ADR法改正に対する意見書

全青司2013年度会発第94号
2014年1月31日

法務省 ADR法に関する検討会 御中


ADR法改正に対する意見書


全国青年司法書士協議会
会 長  谷  嘉 浩


 私たち全国青年司法書士協議会(以下、「当協議会」という)は、全国の青年司法書士約3,000名で構成する「市民の権利擁護及び法制度の発展に努め、もって社会正義の実現に寄与すること」を目的とする団体である。今般、「裁判外紛争解決手続の利用の促進に関する法律」(以下「ADR法」という)の改正に関する議論にあたり、裁判外紛争解決手続(以下「ADR」という)が国民にとってより使いやすいものとなるように、ADR法改正について、以下のとおり意見を述べる。


1.当協議会のこれまでのADRに関する取り組み

 これまで当協議会では、自主交渉援助型調停(以下、「メディエーション」という)を実践し、そのためのトレーニングも開催してきた実績がある。
 私たちが実践してきたメディエーションは、当事者同士による徹底的な話し合いにより、当事者双方が双方の主張の背景を理解し、その上で双方が自ら決断し、その決断について双方が信頼することにより、双方が真に納得した場合にのみ合意が成立することをその特徴とする。この特徴は、ADR法の基本理念である「紛争の当事者の自主的な紛争解決の努力を尊重」することにも資するものであると自負する。

 その立場からは、合意が成立した場合には、合意内容が履行されないという事態は考えにくい。それは、当事者自身が真に納得したことを反故にすることは自分自身をも裏切ることになる、という見えない執行力が働いているからである。


2.執行力付与に関する議論

 メディエーションは多様なADRの中では一つの手法にすぎないし、万能ではない。ADRにおいて、執行力を付与した方がよい手法もあるだろうし、メディエーションという手法で手続を行なっている場合でも、団体によっては、執行力の付与を求める場合もあるだろう。
 例えば、ADRにおいて成立した合意では強制執行ができないために利用を躊躇しているのではないか、合意した和解内容の履行の確保、制度への信頼性を高めるため、認証紛争解決手続においては執行力の付与を可能にすべきではないかとの視点である。


3.当協議会の考え

 確かに、執行力の付与についてはADR法成立当初から待望論があることも事実である。しかし、メディエーションを実践してきた私たちの立場からすると、執行力が付与されることについては反対である。

 ADRはそもそも社会情勢の変化による多様な価値観に応えるため裁判所から独立し、裁判所とは一線を画した自主的な多様な存在であるところに意義がある。ADRの多様な存在の一つ一つに価値と役割があり、メディエーションにも一定の価値と役割があると確信する。
 さらに、前述のとおり、メディエーションは、当事者同士による真摯な話し合いから生まれた当事者自らの最終的な決断とその決断に対する双方の信頼が「合意」という形となるところに最大の特徴があり、メディエーションでの和解(合意)については履行率が高いとする報告もある。一方で執行力の付与は相手方への「不信」を前提とするものであり、メディエーションの考え方に馴染まない。
 したがって、ADRにおいて執行力を付与することについては反対である。

 しかし、多様な存在であるADR機関の実情に合わせて選択的な形での導入が必要な場合もあると考える。その場合、仮に執行力を付与するとしても、執行力を付与した場合の弊害も検討したうえで、執行力を一律に付与するべきではないと考える。



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