'13-12-19 「生活保護法改正、生活困窮者自立支援法成立等に対する会長声明」をアップしました。

全国青年司法書士協議会

会 長 谷 嘉浩


私たち全国青年司法書士協議会は、全国の青年司法書士約3,200名で構成する「市民の権利擁護及び法制度の発展に努め、もって社会正義の実現に寄与すること」を目的とする団体である。

本年12月6日、「生活保護法の一部を改正する法律」(以下「改正法」という。)及び生活困窮者自立支援法(以下「支援法」という。)が成立した。

生活保護法の大幅な改正は1950年の施行後初めてのことであるが、改正法は、①違法な「水際作戦」を合法化・制度化し、②親族の扶養義務を要件化・強化するものであり、生活保護の申請に対して今まで以上の萎縮が生じ、生活保護の利用を一層困難ならしめることとなり、看過できない重要な問題として当協議会は本年5月27日付けで「生活保護改正法案に対する意見書」を発表するなどして、これまで廃案を求めてきた。

改正法は、生活保護の申請時に「厚生労働省令で定める書類」の提出を新たに義務づけたが(改正法第24条)、具体的な書類の内容については、国会審議において結局明らかにされていない。また、申請書や書類の提出の義務付けに関しても「特別の事情があるときは、この限りではない。」と例外規定が設けられはしたものの(改正法第24条第1項、第2項)、どういう事情が特別の事情に該当するかは今後の運用に委ねられている。

扶養義務の要件化・強化に関しても「厚生労働省令で定めるところにより、あらかじめ、当該扶養義務者に対して書面をもつて厚生労働省令で定める事項を通知しなければならない。ただし、あらかじめ通知することが適当でない場合として厚生労働省令で定める場合は、この限りでない。」と、申請書や書類の提出義務付け同様に、今後の運用に委ねられている(改正法第24条第8項)。

当協議会は、このような曖昧かつ運用任せの改正法が施行されることで、真に生活保護の利用を必要とする人々が申請窓口から排斥され、餓死、孤立死などの悲劇を今まで以上に生むことを強く懸念する。

さらに、改正法第29条第1項2号においては、扶養調査に関して、扶養義務者に対して「資産及び収入の状況その他政令で定める事項」について報告を求め得ることを規定した。この「その他政令で定める事項」自体が未だ公表されていないが、親族側の負担が大きくなることは明らかである。現行法上ですら、扶養照会されることで親族に迷惑がかかることを恐れて、生活保護申請を躊躇する方が少なくないため、扶養義務者の負担の増大は、ただでさえ捕捉率が低い我が国において、生活困窮者を窓口から遠ざけることに他ならない。さらに、その様な報告を求めることにより、申請人と親族との間に軋轢が生じかねず、保護利用者の自立の障害にもなりかねない。そのため、扶養義務者に対して報告を求める際は、申請者と一定期間交流があるものに限る等の一定の配慮を各地の福祉事務所に求めるべきである。

以上のとおり、改正法には福祉事務所における「水際作戦」をより一層合法化・制度化しかねない危険があるが、これと同時に成立した支援法についても、要保護状態にある市民に対して、支援法に基づく支援制度の利用が当然の前提と運用されることにより、生活保護の利用を妨げる理由として悪用される懸念がある。特に「生活困窮者一時生活支援事業」については、一定の住居を持たないことをもって、施設収容を当然とする運用がなされることで、居宅保護という生活保護の原則に沿った選択肢を当事者から奪うことがあってはならない。

当協議会は、これまで生活に困窮する市民を支援してきた立場から、申請権を侵害するような違法な取り扱いがなされないように、国が責任をもって各地の福祉事務所に通達を出すことを求める。そして、改正法及び支援法が、いずれも真に個人の尊厳をまもり、本人の自立を支援する制度として機能するよう、今後も引き続き運用を注視し、改善点について積極的意見を述べていく所存である。

最後に、本年の8月から生活保護基準の引き下げが実施されており、引き下げ幅は3年で最大10%と過去最大となっている。この点、今回の生活保護基準引き下げは、特に子育て世代に影響が大きいことが指摘されているが、子育て世代に限らず、低所得者、高齢者、障がい者等の幅広い層に影響を及ぼすものである。生活保護基準についても、社会保障審議会生活保護基準部会に諮るなど、今一度十分な議論を尽くすよう、併せて求める。


以上


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