'13-04-25 出資法・利息制限法及び貸金業法の規制緩和に反対する会長声明

全青司2013年度会発第19号

2013年4月18日



出資法・利息制限法及び貸金業法の規制緩和に反対する会長声明








全国青年司法書士協議会

会 長 谷 嘉浩



私たち全国青年司法書士協議会は、全国の青年司法書士約3,200名で構成する「市民の権利擁護及び法制度の発展に努め、もって社会正義の実現に寄与すること」を目的とする団体である。当協議会は、日頃より多重債務問題の抜本的な解決に取り組み、被害救済活動を行う現場の法律家として、内閣府の設置する規制改革会議における出資法・利息制限法の利率規制及び貸金業法の総量規制の見直しについて、以下の通り声明を発表する。



声明の趣旨



多重債務被害の再燃・拡散を招く、出資法・利息制限法の利率規制及び貸金業法の総量規制の見直しに強く反対する。



理由



1.法改正の成果

深刻化する多重債務問題を解決するために、国民的議論を経た上で2006年12月13日に国会において全会一致で成立した改正貸金業法は、その後、2010年6月18日に完全施行され現在に至っている。

高金利の引き下げ、総量規制、参入規制を柱とする改正貸金業法と相談窓口の整理・強化、セーフティネット貸付の提供、金融経済教育の強化、ヤミ金取り締まりの強化の4つの柱を掲げる多重債務問題改善プログラムによる官民を挙げた多重債務対策により、過重な債務を負担している人は確実に減少に転じており、5件以上の借り入れを行っている人の数は2006年の230万人から2012年には44万人に、自己破産件数は2003年の24万件超から2011年には10万件程度に、また、負債(多重債務)を原因とする自死者も、2007年の1973件から、2012年の839件と右肩下がりで減少し、順調にその成果をあげている。



2.法改正の際に指摘されたような悪影響は生じていない

ヤミ金被害額及び被害人数が2003年の322億円・約32万人から2011年には117億円超・約5万人と顕著に減少していることが示すとおり、改正当時から繰り返されてきた一部論者の「総量規制で借りられなくなった人がヤミ金に流れる」という見通しは外れている。

また、2011年3月末の中小企業向け貸出残高に占めるノンバンクの規模はわずか0.25兆円であり、資金繰りの悪化の要因も、改正貸金業法の施行の影響等ノンバンクの融資態度によるものの割合は多くても全体の1.5%程度である(2009年8月~2012年2月)。むしろ最大の悪化の要因は、販売不振などの営業要因であることから、「法改正が中小企業の資金繰りを苦しめている。」との指摘もあたっていない。

規制の緩和は、中小企業が資金繰りに苦しんでいるところにさらに高利の負担を上乗せするだけであり、多数の業者による貸付が競合して長期化・常習化する多重債務問題の現実を全く見ていない。

なにより、中小企業への支援は、総合的なセーフティネット貸付や中小企業庁等の各種の対策などの横断的な経営支援策で行うべきであり、総量規制や金利規制の緩和によるべきものではないことは明らかである。



3.揺り戻しを絶対に許さない

高金利、過剰与信、過酷な取立てという、いわゆるサラ金三悪は、過重な債務に苦しむ人を大量に生み出し、それがまた更なる高金利、過剰与信、過酷な取立てにつながるという悪循環を形成してきた。生活のすべてを金利の支払いに支配され、深刻な社会問題として過重な債務を負った人のみならず市民の生活基盤を破壊し、一家離散や自殺者を増やしてきたことは統計上も明らかである。とりわけ、商工ローンの大手であった株式会社SFCG(旧商工ファンド)が1994年から1999年までの間に利益を6倍に伸ばしたことに連動し、同じ時期に経済的理由による自殺者数が2.8倍に増えたことは看過し得ない事実である。このような市民生活の破壊を食い止めるために、公序として利息制限法が強行法規として規定され、改正貸金業法による総量規制、参入規制等により合理的な規制がなされているのである。

出資法・利息制限法における利率規制及び貸金業法における総量規制を緩和することが再び多重債務問題の悲劇を巻き起こすことは明らかである。

このような規制の緩和により、憲法で保障された、健康で文化的な最低限度の生活を営む権利である生存権が侵害され、また、自己決定権を行使し、個人として尊重された人生を送る権利である幸福追求権が侵害され、ひいては貧困及び格差の拡大を招くのである。



4.まとめ

我々は、多重債務被害の再燃・拡散を招く、出資法・利息制限法の利率規制及び貸金業法の総量規制の緩和を絶対に許さない。

金利規制や総量規制の緩和を行うべき社会的事実がないのにもかかわらず、上限金利規制、総量規制の緩和を画策する動きは、結局は「高金利でたくさん貸し付けたい」という業界の意向のみに基づくものであり、業界の利益や業界の存続のための議論でしかない。

我々が求めるものは、相談窓口・セーフティネットの拡充やヤミ金融の徹底した取り締まりなど多重債務対策の更なる充実であり、銀行貸出金利が9.110%・公定歩合が5.84%であった1954年以降変更されていない利息制限法の上限利率を、現在のような低金利時代に合わせ、生活を破壊しない水準へと金利を引き下げることである。そして、非正規雇用や低賃金などの労働問題の改善、受けられるべき生活保護等が受けられずに高金利の貸付がそれを代行するといった事態が発生しないために社会保障の一層の充実を求めるとともに、再び多重債務被害を生みだす規制の緩和には断固反対する。




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