'13-04-25 「東日本大震災における原子力発電所の事故に係る原子力損害賠償紛争審査会による和解仲介手続の利用に係る特例に関する法律案」に対する意見書

全青司2013年度会発第23号

2013年4月25日



「東日本大震災における原子力発電所の事故に係る原子力損害賠償紛争審査会
による和解仲介手続の利用に係る特例に関する法律案」に対する意見書




文部科学大臣 下村博文 様





全国青年司法書士協議会

会 長 谷 嘉浩




当協議会は、全国の青年司法書士約3200名で構成され、「市民の権利擁護及び法制度の発展に努め、もって社会正義の実現に寄与すること」を目的とする団体である。

当協議会では、福島第一原子力発電所における未曾有の大事故(以下、「本件事故」という。)発生以降、全ての被害者に対し公正かつ迅速・適切に損害が賠償されるよう、相談会開催などを通じた被害者救済活動をおこなっている。

本年3月28日、文部科学省に設置された原子力損害賠償紛争審査会の第31回の会合において、「東日本大震災における原子力発電所の事故に係る原子力損害賠償紛争審査会による和解仲介手続の利用に係る特例に関する法律案(仮称)」(以下「和解仲介手続特例法案」という。)が審議された。

和解仲介手続特例法案によれば、和解仲介手続の途中で時効期間が経過したとしても、すぐには時効が完成しないよう配慮したものとなっている。しかし、本法案は、被害者の支援を行ってきた立場から見ると不十分な点があると言わざるを得ない。
よって、次のとおり見直しのための意見を述べる。



意見の趣旨



1.和解仲介の打ち切りの通知を受けた日から「一月以内」に裁判所に訴えを提起することは、被害者に過度な負担を強いることになるので、「一月」という期間を大幅に伸長すべきである。



2.本件事故に基づく損害賠償請求債権の消滅時効の問題について、被害者の視点に立ち、被害者に負担がかからないよう根本的な解決方法を立法において確立することを求める。


意見の理由



原子力損害賠償紛争解決センターが本年2月に公表した『原子力損害賠償紛争解決センター活動状況報告書』によれば、同センターに対する和解仲介手続きにおいては、弁護士代理人申立てが件数ベースで平成23年25%、平成24年は32.8%にとどまっており、実に3分の2以上の案件が被害者本人による申立てとなっている。
 和解仲介手続特例法案では、「和解仲介を申し立てた当事者が、和解仲介の打ち切りの通知を受けた日から一月以内に、裁判所に訴えを提起した場合には、和解仲介の申立ての時に訴えを提起したこととみなす。」とされているが、被害者本人が、和解仲介の打ち切りの通知を受けた日から一月以内に自身で裁判所に訴えを提起することや、この短い期間内に代理人を選任して訴えを提起することは現実的に無理である。
そもそも、非常に多くの弁護士を抱え込む東京電力と一被害者が法的解決の現場において対等な力関係にないのは誰の目から見ても明らかである。
 また、被害者の多くは住み慣れた土地からの避難生活を行なっており、被害者が受けている精神的・経済的負担は想像を絶するものがある。したがって、被害者に対する負担はできるだけ少なくするべきである。
 よって、被害者の準備期間や手続き面での負担を考慮すると、「一月」という期間を大幅に伸長する必要がある。



文部科学省は、昨年12月19日、『平成23年原子力事故に係る損害賠償請求権の消滅時効に関する要請』との文書において、東京電力に対し、同請求権にかかる消滅時効の起算点、時効の中断事由等について、柔軟に対応し、被害者の危惧を最小限度にとどめるよう要請した。

これは、国が、東京電力による消滅時効援用の可能性を認識しており、国も本件事故に基づく損害賠償請求債権の消滅時効の問題に対応する必要があることを認めたものである。
本件事故が環境へもたらした負の影響は、非常に甚大かつ広範囲であり、それゆえその被害は極めて多数の者へ及ぶ事態となっている。過去の環境被害、例えば水俣病を振り返ってみても、環境への影響が、世代を超えて長期間にわたる問題となっている事実は極めて重要である。

また、環境被害は、その解決までには非常に長い時間を要する傾向がある。それは、過去の公害訴訟が長期にわたっていることからも明らかである。被害者が自己の損害を主張・立証すること自体、経済的及び手続的に重い負担を強いられることになる。

よって、消滅時効の問題について、被害者の視点に立ち、被害者に負担がかからないよう根本的な解決方法を立法において確立することが必要である。


<< 前へ 次へ >>