'13-04-12 東京電力「原子力損害賠償債権の消滅時効に関する弊社の考え方について」に対する要望書を提出しました。

全青司2013年度会発第16号

2013年4月10日



「原子力損害賠償債権の消滅時効に関する弊社の考え方について」
に対する要望書



東京電力株式会社 御中






全国青年司法書士協議会

会 長 谷 嘉浩



私たち全国青年司法書士協議会は、全国の青年司法書士約3200名で構成され、「市民の権利擁護及び法制度の発展に努め、もって社会正義の実現に寄与すること」を目的とする団体である。
当協議会では、福島第一原子力発電所の爆発事故(以下、「本件事故」という。)発生以降、全ての被害者に対し、公正かつ迅速に全ての損害が賠償されるよう、被害者救済活動を行ってきた。先般、貴社は、平成25年2月4日付けの「原子力損害賠償債権の消滅時効に関する弊社の考え方について」(以下、「東京電力の考え方」という。)との文書を公表した。本件事故発生から2年が経過し、本件事故に起因する原子力損害賠償請求権(以下、「本件請求権」という。)について、将来消滅時効が援用されるのではないかと危惧する被害者がいるなか、貴社がこのような文書を公表したことは、被害者の不安を和らげるという意味で評価に値するものといえる。しかし、「東京電力の考え方」には不十分ないし不明確な文言が見受けられる。
そこで、「東京電力の考え方」に対し、以下のとおり要望する。



要望の趣旨



1 本件請求権にかかる消滅時効の起算点について、「損害賠償請求の受付開始の時点」又は「被害者が現実に損害を認識した時点」のいずれか遅い時期であることを明言すること。

2 貴社が本件請求権にかかるダイレクトメール等を被害者に送付した場合、時効の中断事由である債務の承認に該当することを明確にすること。

3 本件事故当時、避難等対象区域において居住・営業していなかった被害者に対して、時効の中断事由を明確に示すこと。



要望の理由



1 消滅時効の起算点について

貴社は、本件請求権にかかる消滅時効の起算点を、貴社による「損害賠償請求の受付開始」の時点であるとしている。しかし、これは、加害者である貴社の主観をもって、消滅時効の起算点を定めるものであり、民法第724条の文言に反している。
同条に基づく消滅時効は、「加害者に対する賠償請求が事実上可能な状況の下に、その可能な程度に損害及び加害者を知った時」ではなく、「被害者が損害の発生を現実に認識した時」から進行するものと解されており、起算点に関する貴社の見解は、被害者の権利を不当に害するものであると考える。
したがって、本件請求権にかかる消滅時効の起算点は、「損害賠償請求の受付開始の時点」又は「被害者が現実に損害を認識した時点」のいずれか遅い時期であることを明言するよう要望する。


2 時効の中断事由について

 貴社は、被害者が貴社からの本件請求権にかかるダイレクトメール等を受領した場合、民法第147条に定める債務の承認に該当するものとしている。貴社において、債務の承認となる方式を明確にしたことは、評価に値する。
しかし、「東京電力の考え方」によれば、債務承認の条件は被害者によるダイレクトメール等を「受領」することとされており、ダイレクトメール等が被害者に到達しない場合、時効の中断効が生じないことになる。このような場合においても、貴社が本件請求権の存在を認識していることに変わりはなく、「受領」の有無によって、時効の中断効を左右させることは、はなはだ不当である。
そもそも、債務の承認には、特別の方式や相手方の承諾は必要とされておらず、債務者が相手方の権利の存在を認識し、その認識を相手方に表示すれば、時効中断の効力が生ずるものである。
したがって、貴社が本件請求権にかかるダイレクトメール等を被害者に送付した場合、被害者がそれを受領したか否かにかかわらず、時効の中断事由である債務の承認に該当することを明言するよう要望する。


3 柔軟な対応について

 貴社は、「東京電力の考え方」において、本件事故当時、被害者が避難等対象区域に居住・営業をしていたか否かによって、時効の中断事由に差異を設け、本件事故当時、避難等対象区域に居住・営業をしていなかった被害者については、時効の完成後も、被害者の個別の事情を踏まえ、消滅時効に関して柔軟な対応をする旨公表した。
しかし、そもそも、本件請求権は『原子力損害の賠償に関する法律』による原子力損害であり、同法第2条は、原子力損害について、「核燃料物質の原子核分裂の過程の作用又は核燃料物質等の放射線の作用若しくは毒性的作用により生じた損害」と定めており、因果関係がある限り、被害者の被った損害の全てが賠償されなければならず、本件事故による損害を請求できる者は避難等対象区域において居住・営業をしていた者に限定されるものではない。
したがって、本件事故当時、避難等対象区域に居住・営業していなかった被害者に対しても、時効の中断事由を明確に示すよう要望する。


<< 前へ 次へ >>