'13-04-12 文部科学省「平成23年原子力事故にかかる損害賠償請求権の消滅時効に関する要請」に対する意見書を提出しました。

全青司2013年度会発第17号

2013年4月10日



「平成23年原子力事故にかかる損害賠償請求権の消滅時効に関する要請」に対する意見書



内閣総理大臣 安倍晋三 様

衆議院議長  伊吹文明 様

参議院議長  平田健二 様

文部科学大臣 下村博文 様

経済産業大臣 茂木敏充 様






全国青年司法書士協議会

会 長 谷 嘉浩



私たち全国青年司法書士協議会は、全国の青年司法書士約3200名で構成され、「市民の権利擁護及び法制度の発展に努め、もって社会正義の実現に寄与すること」を目的とする団体である。
 当協議会では、東京電力福島第一原子力発電所の爆発事故(以下、「本件事故」という。)発生以降、全ての被害者に対し公正かつ迅速に全ての損害が賠償されるよう、被害者救済活動を行ってきた。本件事故発生から2年が経過し、本件事故に起因する原子力損害賠償請求権(以下、「本件請求権」という。)について、将来消滅時効が援用されるのではないかとの危惧が高まるなか、被害者の権利が失われることのないよう、以下のとおり意見を述べる。



意見の趣旨



国に対して、国策として原子力事業を積極的に推進してきた責任を認め、本件事故が原子力損害の賠償に関する法律が想定した事態を超えることから、被害者の被害回復を図るべく消滅時効に関し立法等の特別の措置を求める。



意見の理由



文部科学省は、平成24年12月19日付け『平成23年原子力事故に係る損害賠償請求権の消滅時効に関する要請』(以下、「要請」という)との文書において、東京電力株式会社(以下、「東京電力」という。)に対し、本件請求権にかかる消滅時効の起算点、時効の中断事由等について、柔軟に対応し、被害者の危惧を最小限度にとどめるよう要請している。


 これを受け、東京電力は、平成25年2月4日付け『原子力損害賠償債権の消滅時効に関する弊社の考え方について』(以下、「東京電力の考え方」という。)との文書を公表し、時効進行の起算点に関する考え方、中断事由に関する考え方及び時効に関する柔軟な対応方針を明らかにした。

 しかしながら、「東京電力の考え方」には、次の通り、被害者の危惧を解消するには不十分な点が多々含まれている。

 第一に、東京電力は、「時効が完成しても、直ちに時効を援用することは考えていない」旨表明しているが、これは、時効完成後に一定の期間が経過すれば、東京電力が時効を援用することを暗に示していること。

 第二に、東京電力は、本件請求権にかかる消滅時効の起算点を、「損害賠償請求の受付開始」の時点としているが、これは、被害者が損害の発生を現実に認識した時をもって時効の起算点とした民法第724条の趣旨に反すること。

 第三に、東京電力は、被害者が同社からの本件請求権にかかるダイレクトメール等を受領することをもって、民法第147条に定める債務の承認に該当するものとしているが、ダイレクトメール等が被害者に到達しない場合、時効の中断効が生じないこと。

 第四に、東京電力は、本件事故当時、避難等対象区域に居住・営業をしていなかった被害者については、時効の完成後も、被害者の個別の事情を踏まえ、消滅時効に関して柔軟な対応をするとしているが、具体的にどのように対応するのか明らかにされていないこと。



 そもそも、本件事故の特性として、被害者が極めて広範にわたること、本件請求権を直ちに行使しえない困難な事情を抱えている被害者が多くいること及び被害の全貌がいまだ明らかになっていないことなどを踏まえると、消滅時効に関し、現行法のまま東京電力のみの対応に委ねることには限界があるのは明らかである。


 よって、国に対して、国策として原子力事業を積極的に推進してきた責任を認め、本件事故が原子力損害の賠償に関する法律が想定した事態を超えることから、被害者の被害回復を図るべく消滅時効に関し立法等の特別の措置を求める。



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