'12-11-22 生活保護基準引下げに反対する会長声明をアップしました。

私たち全国青年司法書士協議会は、全国の青年司法書士約3,200名で構成する「市民の権利擁護及び法制度の発展に努め、もって社会正義の実現に寄与すること」を目的とする団体である。

当協議会は、8年連続「全国一斉生活保護110番」、をはじめとした生活保護に関連する様々な取組を実施しており、昨年度は全国27会場で537件もの相談が寄せられた。現場で市民を支援し続けてきた立場から、一連の報道及び生活保護制度見直しの動きに関して以下のとおり声明を発する。




声明の趣旨

当協議会は、生活保護基準の引下げに反対する。





声明の理由

1.現在、政府は「生活保護基準(最低生活費)の引き下げ」に向けた動きを進めている。具体的には、平成24年8月17日、「平成25年度予算の概要要求組替え基準について」を閣議決定され、「特に財政に大きな負担となっている社会保障分野についても、これを聖域視することなく、生活保護の見直しをはじめとして最大限の効率化を図る。」との方針がなされた。これを受け、厚生労働省社会保障審議会・生活保護基準部会は「生活保護基準」につき、議論を重ねているが、着々と生活保護基準を引き下げる方向で進めているように見受けられる。また、同年11月17日の行政刷新会議の新事業仕分けでは、生活保護基準について就労インセンティブを削がない程度の水準にすべきとの結論が出されるなど、来年度の予算編成過程で、生活保護基準を引き下げるべく着々と布石が打たれている。


2.また、前述の厚生労働省社会保障審議会・生活保護基準部会では、生活保護基準を定めるに際し、「第1十分位層(下位10%の所得階層)を基準として生活保護基準額を定める」という手法で比較検討しているが、大いに問題である。第1十分位層の生活実態については、文化、情報、教養などの生活の質において、平均的所得層と比較しても相当に低く、生活保護受給漏れの世帯が多く含まれている。このような状況においては、第1十分位層の消費水準が生活保護水準以下となるのは当然であり、生活保護基準引下げという結論ありきで比較検討しているとしか考えられない。また、第1十分位層の消費水準との比較を根拠に生活保護を引き下げるということが許されれば、保護基準が際限なく引き下がっていくという事態につながり、いずれにしても、合理性・妥当性がないと言わざるをえない。そもそも、我が国における生活保護の捕捉率(生活保護の利用要件を満たす収入・資産を有する者の中で、実際に利用ができている者の割合)は2~3割といわれている。当協議会が平成17年以降、継続開催している生活保護110番においても「生活が苦しい」「病気で働けない」「仕事がない」「年金が少ない」という相談が毎年多くの市民から寄せられ、生活保護を利用していない相談者の、実に半数以上が要保護の状態である。生活保護110番を通して、いわゆる「漏給」が深刻な社会問題であり、まさに、多数の受給漏れの方たちを救済することが急務であることを実感している。


3.生活保護基準は、憲法25条が保障する「健康で文化的な最低限度の生活」の基準としての我が国の重大な指標でもある。生活保護基準を引き下げるということは、生活保護利用者に交付される保護費の減少という問題に留まらず、様々な社会保障基準(地方税の非課税基準、国民健康保険の保険料・一部負担金の減免、介護保険の保険料・利用料の減額、障害者自立支援法による利用料の減額、生活福祉資金の貸付対象基準、就学援助の給付対象基準)と連動し、さらには最低賃金の引き上げ目標額となっていることからも、生活保護を利用していない低所得者層の市民にも重大な影響を及ぼすことが容易に推測できる。にもかかわらず、本来行うべき貧困の実態調査が不十分のまま、生活保護基準を引き下げれば、これまで以上に自死・餓死・孤立死の発生やDVや児童虐待などの貧困を原因とする犯罪等が増加することは想像に難くない。さらに、当協議会は、平成24年8月以降、全国一斉に「一部報道や財政的な都合のみを前提とした生活保護の安易・拙速な改悪を絶対に許さない請願署名」活動を行っているが、その街頭活動において「生活保護基準の引き下げが行われれば、生活保護利用者だけでなく、広く市民、特に低所得者層の市民生活に重大な影響が及ぶ」という生活保護基準と社会保障基準の連動性についての認識は市民の間に広がっていない。


4.以上のことから、当協議会は、生活保護の基準引下げについて、断固として反対する。


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