'12-08-20 最低賃金の引き上げにより生活保護との「逆転現象」の解消を早期に求める会長声明

私たち全国青年司法書士協議会は、全国の青年司法書士約3,200名で構成する「市民の権利擁護及び法制度の発展に努め、もって社会正義の実現に寄与すること」を目的とする団体である。

当協議会は、「全国一斉労働110番」や「全国一斉生活保護110番」等を実施し、労働者や生活困窮者の相談を受けてきた立場から、厚生労働省中央最低賃金審議会目安に関する小委員会が2012年度の地域別最低賃金について、全国平均で時給を7円引き上げ744円とする目安を報告したことに関し、以下のとおり声明を発する。




声明の趣旨





最低賃金は、全国各地域において、最低賃金の本来の趣旨である、労働者が人たるに値する生活を営むことを保障するのにふさわしい水準まで大幅に引き上げられるべきであり、生活保護給付水準との逆転現象の解消は、生活保護基準がその地域での最低限度の生活を営む基準であることに鑑み、生活保護の基準の引き下げではなく、最低賃金の引き上げにより早期に逆転現象の解消が実現されるように、最低賃金の額を決定すべきである。




声明の理由





厚生労働省の上記審議会小委員会が、本年度の地域別最低賃金(時給)の目安を示したが、これは、全国平均で7円引き上げて744円とするものである。しかし、この賃金は、労働者の生活を保障する水準を大幅に下回るものである。具体的には1ヵ月間労働基準法の定める法定労働時間をフルタイムで働いたとしても、この賃金では月額賃金が12万円程度にとどまり、単身者1人の生活を維持することすら厳しい水準といえる。これでは、ワーキング・プア問題の解消には到底つながらず、労働基準法1条が定める、労働者が人たるに値する生活が営める水準とはなっていない。それにもかかわらず、最低賃金で働く人の手取り額が、生活保護の給付水準を一部の地域で下回っていること(いわゆる「逆転現象」)を根拠に、現在、最低賃金を引き上げる議論ではなく、生活保護基準を引き下げる方向での議論がなされているのである。

しかし、生活保護基準を引き下げることになれば、低賃金の労働が改善されないまま、生活保護受給者の生活水準が切り下げられ、人たるに値する生活の保障はますます実現されなくなるのは明白である。そもそも、最低賃金法は、「賃金の低廉な労働者について、事業若しくは職業の種類または地域に応じ、賃金の最低額を保障することにより、労働条件の改善を図り、もって労働者の生活の安定と労働力の質的向上及び事業の公正な競争の確保に資するとともに、国民経済の健全な発展に寄与すること」を目的としている(同法1条)。以前は、最低賃金の影響を受けることの多かった非正規労働者の収入は、家計において補助的なものとされてきたが、現在は、派遣労働者を含めたパートやアルバイトにより生計を立てる非正規労働者が増え、ワーキング・プアが社会問題になっている。そして、その大部分が最低賃金に近い賃金での労働を余儀なくされているのである。最低賃金制度は、「労働者の生活の安定、労働力の質的向上に資すること」を目的にしているにもかかわらず、上記のような金額では、法の目的を達しているとは言い難い。むしろ、最低賃金さえ支払えばよいというような風潮により、我が国における貧困の拡大の一要因を構成しているといわざるを得ない。

また、最低賃金法9条3項にあるとおり、最低賃金は生活保護制度との整合性を考えなければならない。しかし、その整合性とは、最低賃金の水準と生活保護の給付水準を同水準にするということではない。生活保護制度は憲法が何人に対しても保障する、健康で文化的な最低限度の生活を営むための最後のセーフティーネット(安全網)であるのに対し、最低賃金は、「地域別最低賃金は、地域における労働者の生計費及び賃金ならびに通常の事業の賃金支払い能力を考慮して定めなければならない」(同法9条2項)と規定されており、決して、その地域において最低限度の生活を営むための水準ではないのである。すなわち、生活保護制度との整合性については、最低賃金の方が上回る水準であってこそ整合性が取れると言えるのである。そうである以上、その地域での最低限度の生活を営む生活保護の給付水準と最低賃金で働く人の手取り額の逆転現象は、最低賃金を引き上げて早期に解消するべきである。

以上の理由から、声明の趣旨に記載のとおりに声明を発する。




以上


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