'12-08-08 (株)SFコーポレーションの破産管財手続の適正化についての要望書

私たち全国青年司法書士協議会は、全国の青年司法書士約3,200名で構成する「市民の権利擁護及び法制度の発展に努め、もって社会正義の実現に寄与すること」を目的とする団体である。当協議会は、日頃より多重債務問題の抜本的な解決に取り組み、被害救済活動を行う現場の法律家として、現在進行中の破産者株式会社SFコーポレーション(以下「破産者」という。)の管財人業務について、公正・明確な手続きとなるよう以下の厳格な対応を要望する。



第1 要望の趣旨



1.株式会社ゴールデン商事との債権譲渡契約の経緯を解明し、開示すること

2.投資会社32社との参加取引契約の締結及び解約の経緯を解明し、開示すること

3.山田紘一郎氏外に行った株主配当の取戻しをすること

4.金融機関・山田氏外からの借入金に対する弁済金の取戻しをすること

5.参加取引契約の解約金の取戻しをすること

6.株式会社クレディア(旧株式会社フロックス)からの借入金に対する弁済金の取戻しをすること

7.クロスシード株式会社(旧ネオラインキャピタル株式会社)と交わした参加取引契約に関する覚書について詳細な説明を行うとともに、適正な処理を求めること

8.役員に対して厳しい責任追及をすること

9.債権者のために積極的な情報開示をすること

10.免責債権及び時効債権の売却を停止すること





第2 要望の理由


1.破産者は自己破産申し立てをする以前に二度にわたり、過払い債権者から破産申し立てを受けているが、その前後を通じた資金調達については不明な点が多い。
 破産管財人による「破産法157条の報告書(以下「報告書」という)」(平成24年3月5日東京地方裁判所民事20部受付済)によれば、平成20年3月21日、破産者と日本振興銀行との間で、過払金返還債務を株式会社ゴールデン商事(以下、「ゴールデン」という。)が免責的に引き受けるという債権譲渡契約(以下、本件債権譲渡という。)を締結した。その後、平成20年9月17日に本件債権譲渡に係る債権について、破産者は日本振興銀行に対して、連帯保証をするという契約を行った。これにより、破産者は債権譲渡に係る債権の貸倒リスクを負うこととなった。また、平成20年11月11日には、破産者はゴールデンと吸収分割契約の締結を行い、破産者がゴールデンのローン保証事業を承継したため、いったんはゴールデンに負担させた過払金返還債務を再び破産者が負うことになった。破産者が、債権譲渡等により債務から解放されたにもかかわらず、再び債務を負うようになった経緯は不明瞭である。
 よって、否認権などの行使を考慮しつつ、ゴールデンとの債権譲渡契約の経緯を解明し、開示することを求める。




2.破産者は投資会社32社と参加取引契約(ローンーパーティシペーションスキーム)を締結した。投資会社32社は破産者に対して約337億円を対価として支払い、この契約に係る債権から発生する回収金、貸倒リスク、過払金支払リスクが破産者から投資会社32社に移転した。日本振興銀行は、投資会社32社に対し、この対価の支払いのための融資を行い、破産者は、この融資について譲渡担保を設定した。破産者が受領した約337億円の使途は、主に金融機関への返済(約180億円)、旧オーナーの山田氏外への返済(約11億円)、山田氏外への配当(約118億円)、ネオラインキャピタルへの破産者を買収する資金の供給としての貸付(約81億円)などである。
 その後、投資会社32社から破産者に対し、参加取引契約の解約が申し入れられ、平成22年2月1日破産者と投資会社は参加取引契約を合意解除し、破産者は投資会社32社に対し、約160億円の解約金を支払った。なお、この解約金のうち、80億円については、株式会社クレディア(当時の社名フロックス)から借り入れており、この借り入れに際して、破産者は譲渡担保として貸付債権を提供した。破産者が、参加取引契約により債務から解放されたにも関わらず、参加取引契約の解約に応じた経緯は不明である。
よって、否認権などの行使を考慮しつつ、参加取引契約の締結及び解約の経緯を解明し、開示することを求める。


3.報告書では、配当の適合性について、参加取引契約などのスキームを用いて過払金返還債務をオフバランスにした後に、山田氏外への配当を行っていることから、剰余金配当の要件を満たしていると結論付けられている。また、参加取引契約と債権者破産申立との時間的関係についても、第1次債権者破産申立は平成20年9月12日に提起されているのに対し、参加取引契約の締結は同年8月8日から9月5日にかけて行われたことから、時間的先後関係としては、参加取引契約が先立つとしている。
 しかし、配当を行った後に、オフバランス化された過払金債務を再び負担したこと、及び、債権者破産申立と時間的に近接していることから、債権者を害す意思を持って、配当を行うために一時的に過払金債務をオフバランス化し、配当を行ったのではないかという疑義が生じる。
 よって、否認権などの行使により、山田氏他へ行われた配当を取り戻すとともに、破産財団に組み込むことを求める。



4.破産者は、過払金債権者から返済を求められても、支払いを行わなかったことから支払不能状態であった。このような状態にも関わらず、破産者は参加取引契約から得た対価から、金融機関や山田氏外へ返済を行っている。これは一部の債権者のみへの返済であり、偏頗弁済にあたる。
 よって、否認権の行使などにより、弁済金の取戻しを行うべきである。




5.破産者に対して、平成21年3月に申し立てられた第2次債権者破産申立は、破産者が参加取引契約を行っていたことにより、債務超過の事実が認められないことから申立が棄却された。すなわち、破産者は参加取引契約を解約すれば、直ちに破産手続開始の原因事由(破産法15条、16条)である債務超過になることは容易に予想できた。このように、債務超過状態になるか否かを左右する重要な契約である参加取引契約であるが、契約後1年半ほどで解約され、解約金として約160億円を支払った。
 よって、債権者を害する行為として否認権を行使し、解約金を取り戻すことを求める。



6.破産者は、参加取引契約の解約金としてクレディアから借り入れた資金について、平成22年3月から平成23年6月まで分割で弁済を行っている。
 この弁済は、支払い不能・債務超過の状態で行われており、破産債権者である過払金債権者を害することを知っていながらこれらを行ったものである。また、一部の債権者のみに返済を行っていることから、偏頗弁済にもあたる。
 よって、否認権の行使などにより、弁済金の取戻しを行うべきである。




7.報告書は、破産会社と株式会社クロスシード(以下「クロスシード」という)との間で締結した参加取引契約に関する覚書の中で、クロスシードは破産者に対し、参加取引契約に係る債権の過払金について、過払金相当額を支払う旨の記載があることを明らかにしている。
 よって、当該覚書の内容についての説明及び適切な処理を求める。



8.破産者は、取引履歴について、10年を経過するとシステム上自動的に消去される、としており、10年以上の取引履歴の開示を拒んできた。
 しかし、報告書によると、一時期利用していたシステムでは確かにそのような仕組みが導入されていたようであるが、当該システムが導入される前には台帳での管理がなされており、システム導入後にも廃棄されていないものもあるようである。また、1990年代以前の取引履歴が残っている場合もあるとされている。
 すると、破産者は取引履歴の開示請求者に対し、虚偽を述べていたことになり、平成17年のいわゆるキャスコ判決や貸金業法第19条の2により、取引履歴の開示義務が課せられているにも関わらず、破産者はこれに違反している。すなわち、取締役は破産者が開示義務について適正に対処できるよう社内体制を構築すべき義務があったにも関わらず、これを怠った。
 また、平成19年と平成20年には威圧的な言動による回収などの貸金業法違反により関東財務局により業務停止処分を受けた。取締役は従業員が適法な取立てを行うよう社内体制を構築すべき義務があったにも関わらず、これを怠り、営業停止に伴う損害を発生させた。
 また、破産者は、参加取引契約の解約により、80億円をクレディアからの借入をし、さらに、いったん投資会社32社に移転された過払金返還債務の負担をすることになったが、報告書によると、解約を行った場合と、行わなかった場合を比較した形跡などはなく、解約に応じた合理的な理由を見出すことはできない。報告書では、この解約にともなう借入が破産者の倒産の直接的な原因となったとしている。すなわち、杜撰な意思決定により、多額の債務の負担を負うこととなったものである。
 以上のような、取締役の任務懈怠、特に倒産の引き金となった参加取引契約の解約に伴う債務の負担等について、当時の取締役に対して、会社法423条に基づく役員の責任の追及を行うべきである。



9.報告書によると、破産債権者のうち多くを占める過払金債権者は約66万人であり、過払債権の金額は約2475億円とされている。この過払金債権者のうち、大半が個人消費者であるが、破産債権者に対し、破産手続開始通知を葉書で送ったところ、約20万通が不着により返送されていることから、破産手続の開始すら知らない破産債権者が多くいることが推測される。
 このような状況にも関わらず、破産者のウェブページでは、数件のお知らせがあるのみで、利用者が抱くであろう疑問についてのFAQや、管財業務の進行の程度、約定残債務が残る利用者に対する情報はなく、情報開示が積極的になされているとは言い難い。
 破産債権者は個人消費者が多いことから、情報収集に多くの時間をかけられない。よって、積極的な情報開示を望む。



10.報告書によると、資産性のある貸付債権は売却するとしている。
 当協議会は、破産手続により免責債権となった債権や、消滅時効の完成した債権が債権譲渡されているという事例を把握している。
 免責後の債権譲渡は、破産制度の主旨である破産者の経済的再生に反する。また、このような債権を譲渡することは、破産法第275条の破産者等に対する面会強請等の罪につながる恐れもある。
 よって、免責債権の売却の停止を求める。
 また、我が国で時効について援用が必要とされているのは、消滅時効による利益を得るか否かは当事者の自由であるからとされている。
 しかし、債務者の多くを占める一般消費者は、時効制度の存在そのものや、商事債権の時効期間が5年であることについて知識がない場合も多く、時効完成後に債権譲渡がされた場合、時効が援用できることを知ってなお、時効の完成している債権について支払う債務者はほとんどいないものと思われる。
 一般消費者と企業の情報量の格差はあまりに大きく、このような場合にまで、当事者の能力は対等であるという前提に立った民法の規定を単純にあてはめ、債務者が援用しない限り債権は消滅していないとして、取立てを行うことを許すことは社会的に公正なこととは言えない。時効の完成した債権の譲渡は権利の濫用とも評価できる。
 また、時効が完成していたことから、すでに、破産者は当該債権の償却を行い、貸し倒れとして損金参入をしていたのではないか。その場合、納税額は減額されたはずである。このような時効債権を売却し、利益を得ることは、利益の二重取り行為である。
 さらに、時効が完成するほど請求を行わなかったのは破産者であり、破産者が破産を申し立てたからといって、その懈怠を消費者に転嫁すべきではない。また、破産者は過払金については返還を積極的に行わないことで有名な会社であった。そのような自己の義務は果たさず、権利のみを追求してきた破産者が破産申立に至ったときに、時効債権を売却し、譲受人に取立てをさせることは、社会的に認容される行為ではない。
 よって、時効債権の売却の停止を求める。




以上


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