'21-06-11 重要土地等調査規制法案の廃案を求める会長声明を発出いたしました。

重要土地等調査規制法案の廃案を求める会長声明



2021年6月11日

全国青年司法書士協議会
会長 阿部健太郎


 政府は「重要施設周辺及び国境離島等における土地等の利用状況の調査及び規制等に関する法律案」(重要土地等調査規制法案 以下「本法案」と言う。)を国会に提出し、本年6月1日に衆議院本会議で可決され、参議院に送付された。
 本法案は、重要施設の周辺の区域内及び国境離島等の区域内にある土地等が重要施設又は国境離島等の機能を阻害する行為の用に供されることを防止することを目的とし、内閣総理大臣が「注視区域」及び「特別注視区域」を指定することを定めている。
 注視区域内では土地等の利用状況の調査をし、重要施設や国境離島等の機能を阻害する行為又は機能を阻害する明らかなおそれがあると認めるときは、行為の中止、その他必要な措置をとるべき旨の勧告及び刑事罰を伴う命令を発することができ、特別注視区域内にある土地等の売買契約については、事前の届出を罰則によって義務付けるものである。
 本法案は、私権の制限を伴うにもかかわらず、内容が曖昧不明確であり、個人の自由や権利が不当に制限されるおそれが極めて高いため、市民の権利擁護を目的に掲げる当協議会として、重大な懸念をここに表明する。

1 内閣総理大臣は、重要施設の敷地の周囲「おおむね千メートルの区域内」及び国境離島等の区域内で、その区域内にある土地等が「当該重要施設の施設機能又は当該国境離島等の離島機能を阻害する行為の用に供される」ことを特に防止する必要があるものを注視区域として指定することができるとされており、この「重要施設」には、自衛隊の施設、米軍基地、海上保安庁の施設のほか、「生活関連施設」が含まれるが、その具体的内容は政令に委ねられている。
 また、「機能を阻害する行為」や「明らかなおそれ」がある場合、利用中止などを勧告・命令できるものとされ、命令に従わない場合は、刑罰が科せられるが、「機能を阻害する行為」や「明らかなおそれ」の具体的内容については、安全保障上、地域特性などに応じて柔軟に対応する必要性があることを理由に本法案には規定されておらず、法案成立後に定められる政府の基本方針に委ねられている。
 本法案は、刑罰を伴うにもかかわらず、刑罰を構成する要件が政令に委ねられており、刑罰の明確性の原則に反するものである。

2 本法案第7条では内閣総理大臣が、注視区域内にある土地等の利用の状況についての調査を行うことができる旨を定め、土地等利用状況調査のために必要がある場合においては、関係行政機関の長及び関係地方公共団体の長その他の執行機関に対して、当該土地等利用状況調査に係る注視区域内にある土地等の利用者その他の関係者に関する情報のうちその者の氏名又は名称、住所のほか、「その他政令で定めるもの」の提供を求めることができるとされている。
 また本法案第8条では第7条の調査の結果、なお必要があると認めるときは、「土地等の利用者その他の関係者に対し、当該土地等の利用に関し報告又は資料の提出を求めることができる」とされている。情報提供を求める対象としての「利用者その他の関係者」の判断については、基本方針に具体的に例示するとされるが、明確かつ具体的に定めることは求められておらず、内閣総理大臣の判断となる。
 本法案は第3条において、この法律の規定による措置を実施するに当たっては「個人情報の保護に十分配慮すること」や、「必要な最小限度のもの」とする点を定めているが、上記の通り、調査や報告の具体的内容については、明確に規定されておらず、政府の恣意的な調査や情報収集を抑止することは困難である。
 衆議院本会議において、政府は本法案に基づく調査・報告は注視区域内にある土地等の利用状況の把握を目的としており、条文上も土地等の利用に関する内容を超え、個人の思想、信条にかかる情報を対象とすることは想定していないと答弁しているが、本法案において、そのような情報の収集について、制度的な予防措置が講じられている訳ではない。
 重要施設の周辺の区域内及び国境離島等の区域内における、市民運動や市民活動が「機能阻害行為」とされ、結果として市民の自由な言論や集会・結社の自由が弾圧されることとなれば、民主主義の健全性が根底から破壊される可能性も否定できない。

3 本法案の前提となる立法事実については、政府は曖昧な答弁を繰り返しており、少なくとも重要施設の周辺の区域内及び国境離島等の区域内において、実害が生じた事実は存しないと明確に答弁している。国防や安全保障に関係する可能性が高い問題であり、実害が生じてからの対応ではなく、先んじて手当てを行う必要性については、理解し、安全保障に関する政治的な判断は尊重するとしても、明確な立法事実が存しない状態で、私権に大きな制限を加えることを許容する本法案は、憲法上、私権制限として許容される公共の福祉の範囲を大きく超える懸念がある。
  
4 本法案によって最も大きな影響を受けるのは、県土が国境離島にあり、市街地を含めて多くの米軍基地を抱え、全域が注視区域に指定されるおそれがある沖縄県である。先の衆議院内閣委員会の審議においては、与党議員から沖縄県名護市辺野古の新基地建設反対運動を示唆したうえで、本法案よる取り締まりを求める発言もあり、沖縄県を対象とする意図を窺い知ることができる。
 沖縄県は既に、与那国島、宮古島が土地取引の際に事前届出が必要となる特別注視区域の候補として例示されており、本法案は、過重な基地負担を強いられている沖縄県の人々にさらなる負担を課すものである。

 よって、当協議会は、本法案は、上記の通り、見過ごせない重大な問題点を包含しており、法案の目的に対し、その手段が曖昧不明確であり、市民の基本的人権を害する可能性があり、断じて許容することは出来ず、廃案を求める。


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