'15-02-23 「民法(相続関係)の改正」に関する要望書

「民法(相続関係)の改正」に関する要望書



 当協議会では、法務省が昨年1月に相続法制検討ワーキングチームを設置したことを受けて相続法の改正について検討を重ねてきたが、相続法制検討ワーキングチームの設置の趣旨及び相続法制検討ワーキングチーム報告書を見る限りでは、法律婚の尊重に重きが置かれ、家族の多様化を見据えた個人の尊重を中心とした法改正に繋がらない可能性があるように思われる。そこで、当協議会は、法務大臣が法制審議会に相続法の見直しについての諮問をするに当たり、家族の多様化を見据えた個人の尊重を中心とした観点からの見直しがなされるよう要望するものである。

要望の趣旨

 当協議会は、法務省が相続法の改正を検討するに当たり、法律婚を尊重するために配偶者を保護するという観点からの見直しではなく、家族の多様化を見据えた、個人の尊重を中心とした観点からの見直しがなされるよう要望する。

要望の理由

 法務省のホームページ(http://www.moj.go.jp/shingi1/shingi04900197.html)によれば、「第185回国会(臨時会)において,嫡出でない子の相続分を嫡出子の相続分と同等にする民法改正が行われました。この民法の改正に際しては,各方面から,法律婚を尊重する国民意識が損なわれるのではないか,配偶者を保護するための措置を併せて講ずべきではないかといった様々な問題提起がされました。そこで,相続法制の在り方について検討を進めるため,家族法研究者や一般有識者等の協力を得て,この「相続法制検討ワーキングチーム」を設置することとしたものです。」と相続法制検討ワーキングチーム設置の趣旨を以上のように述べ、平成25年9月4日最高裁決定(民集第67巻6号1320頁)を受けて、①法律婚を尊重する国民意識が損なわれる、②配偶者を保護するための措置が必要である、という理由から相続法の改正に着手した。相続法は、日本国憲法の制定に伴う全面改正以来約70年間大幅な見直しがされておらず、現代の家族形態に見合った法改正を法務省が検討していることは大いに評価できる。

 しかしながら、当協議会は、①法律婚を尊重する国民意識が損なわれる、②配偶者を保護するための措置が必要である、という相続法改正の理由については疑問を呈し、家族の多様化に応じた個人の尊重を基軸とした相続法の改正が検討されるよう要望するものである。

 上記最高裁決定は、昭和22年民法改正以降の変遷等の概要を語る中で「平成期に入った後においては、いわゆる晩婚化、非婚化、少子化が進み、これに伴って中高年の未婚の子どもがその親と同居する世帯や単独世帯が増加しているとともに、離婚件数、特に未成年の子を持つ夫婦の離婚件数及び再婚件数も増加するなどしているこれらのことから、婚姻、家族の形態が著しく多様化しており、これに伴い、婚姻、家族の在り方に対する国民の意識の多様化が大きく進んでいる」と家族の多様化について指摘している。今や婚姻カップルと未成熟子からなる核家族が家族の基本形でないことは国民の意識の中にも広く浸透しており、その中でことさら法律婚を尊重することや配偶者を保護する意義は少ない。今後ますます多様化していくであろう家族形態に法律が応えていくには、法律婚や配偶者といったある属性に限って保護するという発想ではなく、個人を個人として尊重することこそが家族の尊重に繋がっていくという認識をもつ必要があり、事実婚カップルであっても中高年の再婚カップルであっても安定した相続手続きの中で財産承継ができることが望ましい。

 また、相続法制検討ワーキングチーム報告書によれば、相続法改正の検討項目は①配偶者の一方が死亡した場合に、相続人である他方の配偶者の居住権を法律上保護するための措置、②配偶者の貢献に応じた遺産の分割等を実現するための措置、③寄与分制度の見直し、④遺留分制度の見直し、の4点である。一方で、かつてない超高齢社会を迎えるに当たり、日本においても遺言の重要性がますます認識されてくるように思われる。しかしながら遺言法制はその遺言能力、遺言の方式、遺言の解釈いずれも判例に依拠している部分が多く安定した運用がされているとは言い難い。また遺言制度は遺留分とも密接な関連性があることから、相続法改正を検討するに当たっては遺言制度に関しても十分な議論がなされるよう強く要望するものである。

2015年(平成27年)2月20日
全国青年司法書士協議会
会長 水 谷 公 孝


<< 前へ 次へ >>