'14-11-20 「民法(債権関係)の改正に関する要綱仮案」に対する意見書(定型約款について)

「民法(債権関係)の改正に関する要綱仮案」
に対する意見書(定型約款について)




 当協議会では、2011年1月21日付「民法(債権関係)改正に関する意見書」及び同年7月29日付「『民法(債権関係)の改正に関する中間的な論点整理』に対する意見書」において、約款に関する規定を民法に設けるよう意見を述べてきた。
 しかるに、今般、公表された「民法(債権関係)の改正に関する要綱仮案」を見るに、「第28 定型約款」について、項目全体がP(保留)の取扱いとなっており、引き続き検討するものとされているものの、規定を設けること自体が見送られるのではないかと危惧するものである。

 そこで、約款に関する規定を民法に設けることの必要性を確認するとともに、それを前提とし、以下のとおり意見を述べる次第である。

1.約款に関する規定を民法に設けることの必要性について
 契約は、当事者の意思の合致により成立するとされる一方、約款を使用した取引の場合、通常の契約と同じ意味での意思の合致は存在せず、約款が当事者を法的に拘束する根拠については、多数の学説が乱立する状況を呈している。法的根拠が不明確なまま、事業活動の利便性を図る目的で、取引社会の様々な場面で広く使用されているのが約款であり、業法等に定めがある場合を除き、約款準備者には、何らの法規制が及んでいないのが現状である。
 特に、事業者間取引であっても、自己の事業に直接関係のない取引もあるところ、現行の消費者契約法では、このような取引にも同法が適用されるか解釈上の疑義が生じており、公序良俗等に関する規定が現行民法にもあるとはいえ、定型約款に不当条項規制及び不意打ち条項規制が設けられることによって約款取引の安定性と約款により影響をうける関係者の保護を、明文でもって民法に設けることにより、消費者契約法の空隙を埋めるのが望ましい。
 加えて、「社会・経済の変化への対応を図り、国民一般に分かりやすいものとする」(諮問第八十八号)との今般の改正目的からしても、約款に関する規定を設けることの必要性は明らかである。
 よって、当協議会は、民法(債権関係)改正法案に、約款に関する規定を設けることを求める。
 なお、民法(債権関係)部会での議論や中間試案に寄せられた意見(パブリックコメント)を見るに、経済界より、明文化することの必要性に疑問が示され、明文化された際の適用範囲や内容を危惧する意見が出されているが、約款が、主として、約款準備者の便益に資することを目的に使用され、交渉力のある側によってその内容が決定されていることに鑑みれば、自らの利益に固執することなく、より広い視野からの意見を望むところである。

2.定型約款の定義について
 約款の明文化については、その適用範囲を巡り様々な議論が取り交わされているところであるが、そのためもあって、要綱仮案(案)における約款の定義は、非常に分かりにくいものとなっている。例えば、「均一」と「画一」はどのように違うのか、「当事者双方にとって合理的な取引」とは何を意味するのか、理解し難いところである。正確な表現と文言の分かりやすさはトレードオフの関係にあるとはいえ、「国民一般に分かりやすいものとする」との当初の理念に立ち返るべきである。

3.定型約款によって契約の内容が補充されるための要件等について
 不当条項規制及び不意打ち条項規制を明文化することには賛成である。しかしながら、要綱仮案(案)の補充説明(部会資料83-2、40頁)を見るに、同仮案(案)にある「定型取引の態様」なる文言に不意打ち条項規制の機能をもたすものとしているが、このような抽象的な表現で期待された役割を十分に果たせるかは疑問である。今般の要綱仮案(同仮案(案)を含め)については、些細な文章表現の中に思わぬ意味が込められていることがあるが、裁判官が立法段階での解釈に拘束されないことからすれば、このような表現方法は望ましいものではない。不意打ち条項規制を設けるのであれば、その旨をはっきりと明文化すべきである。
 また、「相手方の権利を制限し、又は相手方の義務を加重する条項」については、不当条項規制または不意打ち条項規制の対象となり得るものとしているが、「制限」や「加重」との表現を用いる場合、何と比較してそのような判断をするのか、比較対象を明らかにすることが必要である。

4.定型約款の変更について
 要綱仮案(案)では、定型約款の変更をすることができる旨を同約款に定めた場合に限り、相手方の合意なく定型約款を変更することができるものとされている。そして、そのような変更を行なう条件として、「定型約款に変更に関する定めがある場合」なる文言が用いられているが、このような表現を用いると、定型約款に変更に関する定めがない場合であっても、相手方の合意なくして定型約款を変更できる場面を想定していることとなり、文章表現としては不適切である。
 また、定型約款の変更が相手方の一般の利益に適合するときは、変更の効力が発生した後に周知した場合であっても、その効力は有効であるとされているが、「相手方の『一般の』利益」が何を意味するのか不明確である。
 加えて、相手方の一般の利益になるとはいえ、相手方に周知される前に変更の効力が生じるとすると、当該変更を知らんがために、相手方が当該利益を享受する前に契約を解除してしまうことが起こりうるところであり、相手方の一般の利益の有無によって別異の取扱いとする合理的な理由は見いだし得ない。

2014年(平成26年)11月18日
全国青年司法書士協議会
会長 水 谷 公 孝

※意見の全文は下記よりご覧ください。

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